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仙台高等裁判所 平成3年(ネ)346号 判決 1992年10月26日

控訴人(原告)

菅原甫

ほか一名

被控訴人(被告)

相原健司

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  被控訴人は、控訴人らに対し、それぞれ一二六八万三四六五円及びこれに対する平成元年二月二一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  控訴人らのその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを五分し、その三を被控訴人の、その余を控訴人らの各負担とする。

三  この判決の一項1は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一控訴の申立て

原判決を次のとおり変更する。

被控訴人は、控訴人らに対し、それぞれ金二〇五七万八六四〇円及びこれに対する平成元年二月二一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

次のとおり附加するほかは、原判決記載のとおりである。

一  原判決二丁表七行目「で、」の次に「中央分離帯に乗り上げた自動車(黒色ニツサンセドリツク岩五リ二三五六、以下「被害車両」という。)を車道におろそうとして作業中、」を加える。

二  同丁裏八行目「か」から九行目「損害」までを削除する。

第三判断

一  次のとおり附加するほかは、原判決記載のとおりである。

1  原判決三丁表九行目「その事故」から同丁裏八行目末尾までを「被害者は、事故前の昭和六三年二月から平成元年一月までの一年間、同一雇主のもとで継続して就労していたのではなく不就労の期間もあつたし、日当額も同一ではなかつた(控訴人菅原甫本人)から、その年収の認定には困難を伴うところ、甲二二号証、二三号証の一・二によれば、被害者は昭和六三年九月大船渡公共職業安定所において、失業者として認定され、三二万一〇〇〇円の失業保険金を支給されているが、これは失業前六か月の給与総受給額を一九二万六〇〇〇円と認定して計算(1,926,000円÷180日×0.6×50日=321,000円)されたものであることが認められるので、被害者の事故前の年収は、この公的な認定をもとに三八五万二〇〇〇円(1,926,000円÷6月×12月)と推認するのが相当である。」と改める。

2  同四丁表一〇行目「原告ら」から同丁裏一行目末尾までを「他に、前記被害者の年収についての認定を左右するほどの証拠はない。

右収入に基づき、生活費控除率を五〇パーセント、ホフマン式により中間利息を控除して、被害者の逸失利益を算定すると、四四一四万九六九八円となる。

3,852,000円×0.5×22,923=44,149,698円」と改める。

3  同五丁表六行目「上り車線」を「下り車線」と、七行目「下り」を「上り」とそれぞれ改める。

4  同五丁裏末行「車両」の前に「被害」を加え、同行から同六丁表一行目にかけての括弧書の部分を削除する。

5  同六丁裏四行目「三角板」の次に「(もつとも、高速道路におけるがごとく停止表示器材を置くことが義務づけられているわけではない。道交法七五条の一一、同法施行令二七条の六)」を、同七行目「被告は、」の次に「勤務先から帰宅のため、」を、同七丁表三行目「中央分離帯」の前に「、交差点内の」をそれぞれ加える。

6  同七丁表末行冒頭から同八丁裏一〇行目末尾までを次のとおり改める。

「(八) 事故後の実況見分によると、被告車の左前照灯(右前照灯は、事故のため破損し点灯不能)による照射距離は、二九・六メートルであつた。また、被害者及び上条が事故直前、別紙図面<ア>及びに位置していたため、被控訴人の進行方向からは、第一車線及び第二車線のいずれからも、被害車両の右後部の点滅灯は見えなかつたが、左右の前照灯と右前部の点滅灯が点灯しているのは見える状態であつた。

2 右認定の事実によれば、下り車線を走行する被控訴人は、当時夜間で降雨のため見通しがよくなかつたとはいえ、相当離れたところから、かえつて夜間であるために、自車の照射範囲を超えて対向上り第二車線上に、被害車両の左右の前照灯と少なくとも右前部の点滅灯が点灯している異常状態に気付いた筈である。現に右対向第二車線を走行してきた上条は、同一車線上の進路前方である故もあるが、約二〇〇メートルも手前で被害車両の前照灯及び前後の点滅灯の点灯していることに気付いているのである。その距離からみて、被控訴人の進路前方を貨物自動車が走行していたことを考慮しても、被控訴人としては、前方注視を尽くしていたならば、追越しを開始する前に、どんなに遅くても、別紙図面<2>の位置で追越しのため右にハンドルを切つて第二車線に進入を開始した直後に、前叙のとおり交差点内で、被害車両の左右の前照灯と右前部の点滅灯の点灯していることに気付いた筈である。そして、追越し開始前に気付いた場合に、追越しを避けるべき状況であつたことはいうまでもなく、追越し開始直後に気付いた場合でも、同図面<2>から<甲>(被害車両)までは、約五〇メートル余もあるうえ、間もなく交差点に入ろうとしていたのであるから、被控訴人としては、直ちに追越しをあきらめ、前方を注視しつつ減速して適切なハンドル操作を行うべきであり、そうしたならば、被害車両は、下り第二車線に約四分の一程度はみ出していたにすぎないので、本件事故を回避することが可能であつたと考えられる。それなのに、被控訴人は、被害車両の手前約二三メートルに接近するまで同車に気付かず、しかも、気付いたときは、指定最高速度五〇キロメートル(毎時)を二〇キロメートル(毎時)もオーバーするまでに加速しており、急停車の措置をとつても及ばず、本件事故をひき起すに至つたのであるから、被控訴人に過失があることは明らかといわなければならない。」

7  同九丁表四行目「そして」から同丁裏九行目末尾までを「そこで、「被害者は、被害車両の前照灯及び前後左右の点滅灯を点灯したのであるが、国道一七号線の下り車線については、第二車線上に被害車両の右後方のトランク部分の一部がはみ出したのみであり、右後部の点滅灯が被控訴人から見える筈であつたとはいえ、雨が降つていて見通しは悪く、作業中にこの点滅灯が人体にさえぎられて見えなくなることもあるのであるから、右下りの第二車線については特に、走行接近してくる車両との接触を避けるべく、そのような車両の有無、動静に充分の注意を払いながら作業を続けるべきであつたにもかかわらず、これを怠つたために、本件事故に遭遇したものといわなければならない。」と改める。

8  同九丁裏末行「七割」を「八割」と、「三割」を「二割」とそれぞれ改める。」

9  同一〇丁表二行目「三割」を「二割」と、三行目「三七六七万三六八七円」を「四八五三万六九九〇円」と、九行目「六一〇万一八一三円」を「一一五三万三四六五円」と、一〇行目「一二〇万円」を「二三〇万円」とそれぞれ改める。

二  よつて、原判決を変更することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 佐藤邦夫 斎藤清實 小野貞夫)

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